
「ビルメンテナンスの仕事について教えてほしい!」という方に向けて、今回はビルメンテナンスの仕事内容をわかりやすく解説していきたいと思います。
ビルメンテナンスの仕事内容を解説【資格や年収は?きつい?】

ビルメンテナンスの仕事は、商業施設やオフィスビルや病院などのビルが、安全で快適に利用できるように、裏方で管理やメンテナンスをする仕事です。
電気設備・空調設備・ボイラー設備などの管理を行ったり、不具合のある設備の保守・点検を行ったり、必要に応じて修理や専門業者の手配を行ったりします。
ビルメンテナンスの仕事を一言でいうと「規模の大きな建物における施設の管理・メンテナンスを行う職業」です。
大型ビルに訪れる人が快適に利用できるように、安全な環境を維持するという役割を担っています。
また、大規模のビルに対しては「ビル管理法」という法律が適用され、点検項目や検査方法が定められているため、ビルメンテナンス業者が施設の所有者に代わって専門作業を行うことは必須なのです。
大手ビルメンテナンス会社では、ビルメンテナンスのほかにも、警備や清掃までを自社で一括で手掛ける会社もあります。
「ビルメンテナンスの仕事」は、人々がビルを安全・快適に利用するために必要不可欠な仕事なのです。
ビルメンテナンスの一日の流れ
ビルメンテナンスの仕事は、担当する施設によって、早朝勤務や夜勤など、勤務体系がそれぞれ異なります。
日勤シフトの場合のビルメンテナンスの仕事の「一日の流れ」は以下のようになります。
【8:30】担当施設に直行で出勤し、当直者から引き継ぎを受ける→【9:00】施設内を一通り見まわり、異常がないかをチェックする(巡回)→【12:00】昼休憩・昼食→【13:00】設備の保守点検・害虫駆除・騒音測定作業などの業者に立ち会う→【15:00】トイレなどの施設の修繕作業を行う→【18:00】夜勤担当者に業務を引き継いで、帰宅。
ビルメンテナンスの仕事は、特に問題が発生しない限りは、基本的に上記のような一連の流れになります。
ビルメンテナンスに必要な資格は?

工業系高校・大学を卒業してからビルメンテナンスの仕事に就くというのが、これまでの王道のルートでしたが、ビルメンテナンス業界は人手不足が続いており、未経験者の中途採用を積極的に行う企業が増えてきました。
そのため、専門的な勉強をせずにビルメンテナンス業界に入る人が多数おり、就職時点で知識がある人はほとんどいません。
毎年、都市部では新しい大型ビルが建てられているので、今後もビルメンテナンスの需要は大きくなることが予想されます。
しかし、ビルメンテナンスの給与水準はあまり高くないので、収入アップのためには様々な資格を取得して、スキルアップしていく必要があります。
ビルメンテナンス4点セットと呼ばれている資格には「第二種電機工事士」「危険物取扱責任者乙種4類」「二級ボイラー技士」「第三種冷凍機械責任者」があります。
この4つの資格は、試験の難易度は高くないので、ビルメンテナンスの仕事をしている人のほとんどが取得しています。
ビルメンテナンスで給料UPを狙うための資格

ビルメン4点セットの資格よりも難易度の高い資格に「ビルメンテナスの三種の神器」といわれている3つの資格があります。
その資格は「第三種電気主任技術者免状(電験三種)」「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」「エネルギー管理士(熱・電気)」です。
電験三種は、電気に関する知識と技術を証明する国家資格です。
電験三種を取得していると、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力が5,000キロワット以上の発電所は除く)で、工事・運用・維持の保安監督業務をすることが可能になります。
ビル管理士は、建築物の環境衛生の維持管理に関する監督をするための国家資格です。
ビル管理士を取得していると、床面積が3,000平方メートル以上ある場合に設置が義務付けられているので、そこで活かせます。
エネルギー管理士(熱・電気)は、規定量以上のエネルギーを使用する工場への設置が義務付けられているので、就職・転職時に優遇されることが多いです。
これらの3つの資格は合格率が10%以下と難易度が高いので、ビルメンテナンスとしてキャリアアップするためには、かなり有効な資格となります。
ビルメンテナンスの年収は?

ビルメンテナンスの平均年収はかなり低いといわれています。
実際に、ビルメンテナンスの平均年収は300万円程度という統計データが出ています。
日本全体の平均年収が441万円(国税庁の民間給与実態調査)なので、それと比べると、ビルメンテナンスの平均年収は低い水準であるといえます。
しかし、比較的に小さな企業が多いことや、業界全体での人の出入りが激しいことから勤続年数の短い社員が多いことが、平均年収を下げている要因になっていると考えられます。
勤務形態や会社組織によっても年収が変わる
ビルメンテナスの給与は、勤務形態によって変わります。
ビルメンテナンスには、大きく分けると「常駐」と「巡回」という勤務形態があります。
常駐だと宿直が入る職場が多く、「宿直・夜勤手当」が出るので、ビルメンテナンスの中でも常駐の給与は高くなりやすい傾向があります。
ちなみに、独立系のビルメンテナンス会社よりも、系列系のビルメンテナス会社のほうが、給与や待遇が手厚い傾向があります。
系列系のビルメンテナンス会社は、親会社の影響を受けるため、親会社の経営状態に給与が左右される可能性もありますが、小規模のビルメンテナンス会社では賞与の支給もないということも珍しくありません。
ぜひ、就職先選びの参考にしてください。
ビルメンテナンスで年収を増やす方法
ビルメンテナンス業界でしっかりとキャリアを積んで、資格も取得してスキルアップすることができれば、年収を高めていけるチャンスはあります。
たとえば、ビルメンテナンス4点セットの資格をすべて取得すると、月に1万円ほどの資格手当がつく会社が多いです。
さらに、ビルメンテナスの三種の神器の資格まで取得できれば、資格手当の額はもっと上がっていきます。
ビルメンテナンスの仕事はきつい?

ビルメンテナンスの仕事に対して、「きつい」や「大変そう」といったネガティブなイメージを持っている方も多いと思います。
ビルメンテナンスの仕事を依頼するのは、主に施設を所有するオーナーになり、そのビルに入っているテナントはオーナーにとってのお客様ということになります。
そのため、ビルメンテナンスの担当者は、テナントからの要望にもできる限り応える必要があるので、電球交換・ドアの修理・植木の水やり・清掃などの管理外の雑用の要求にも対応しなければいけないという大変さがあります。
さらに、設備の異常発生時などの自分に非がないクレーム対応などもあり、立場的に強く出られないという辛さがあるので、この部分をストレスに感じる人も多いようです。
ビルメンテナンスは主に点検や修理などの裏方の仕事になるので、直接お客様から感謝されることが少ない仕事です。
とくに大変な現場は病院や大型施設
お客様は「何も起こらないことが当たり前」だと思っているので、自分自身で「自分はビルを守っている」という誇りを持って働かないといけない点も大変な部分になります。
また、入院患者がいる病院などは、設備トラブルが命を左右することにもつながるので、とくにプレッシャーがかかる現場になります。
ショッピングセンターやデパートも日中は利用客からのクレーム対応があったり、テナントとのコミュニケーションがあったり、営業終了後の夜中に修理や搬入などを行なったりと、大型の商業施設になるほど業務が大変になる傾向があります。
ビルメンテナンスは楽な仕事?
「ビルメンテナンスは楽な仕事じゃないの?」と思っている方も、ここまでの内容を知って、少しは考えが変わったのではないでしょうか。
ビルメンテナンスの仕事は、大変な部分もありますが、その分やりがいもたくさんあります。
ビルメンテナンスのやりがいは「大きな建物を支える使命感」「専門知識がたくさん身につく」「チームで仕事を進めることができる」という部分です。
自分の行動によって多くの利用者の安全・安心が守られているという使命感、各分野の経験や資格取得によって身につく専門知識、周囲と一つの目的に向かうという達成感が、ビルメンテナンスの仕事の最大の魅力です。
「楽そうな仕事だからビルメンテナンスを選ぼう」という考え方ではなく、しっかりとビルメンテナンスの仕事内容ややりがいを知ったうえで、就職先を選んでくださいね。
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ビルメンテナンスの協会は?
ビルメンテナンス業界には、さまざまなビルメンテナンスの協会が存在します。
公益社団法人全国ビルメンテナンス協会を筆頭に、公益社団法人東京ビルメンテナンス協会、一般社団法人愛知ビルメンテナンス協会、公益社団法人岐阜ビルメンテナンス協会、一般社団法人愛媛ビルメンテナンス協会、一般社団法人新潟県ビルメンテナンス協会、一般社団法人長崎県ビルメンテナンス協会など、各都道府県ごとにビルメンテナンス協会が存在します。
全国ビルメンテナンス協会とは、「建築物の快適な環境の確保」という社会的要請に応える公共団体として、1966年に内閣府より認定されて設立された公益社団法人のことです。
全国ビルメンテナンス協会は、日本全国47都道府県のビルメンテナンス協会と連携しています。
ビルメンテナンス協会は、すべての都道府県に独立した組織があり、それぞれ独自の事業活動を行っていますが、全国のネットワークで連携することで常に事業を協働することが可能になっています。
全国ビルメンテナンス協会の協会運営理念は「全国ビルメンテナンス協会は、人と社会を元気にする仕組みをつくるために存在する。」です。
ビルメンテナンスの大手は?

ビルメンテナンス業界の大手企業には、以下のような企業があります。
- イオンディライト株式会社(売上高:2,947億2,500万円)
- 日本ハウズイング株式会社(売上高:985億6,000万円)
- 日本管財株式会社(売上高:924億9,099万9,000円)
- 日本空調サービス株式会社(売上高:431億4,300万円)
- 株式会社ビケンテクノ(売上高:322億1,391万円)
ビルメンテナンス会社の中で、平均年収が高い会社は以下のとおりです(転職口コミサイトからのデータをまとめたものなので、あくまでも参考情報にしてください)。
- ザイマックス(平均年収:685万円)
- アズビル(平均年収:679万円)
- 三井不動産ビルマネジメント(平均年収:633万円)
- 三幸エステート(平均年収:625万円)
- NTTファシリティーズ(平均年収:600万円)
- 野村不動産パートナーズ(平均年収:572万円)
- ダイキン(平均年収:564万円)
ちなみに、イオンディライト株式会社では、最高年収が4,000万円となっており、ごく一握りですが、めちゃくちゃ稼いでいる人もいます。
ビルメンテナンス業界全体の市場規模は3兆700億円となっており、市場成長率は3%というデータが出ています(矢野経済研究所調べ)。
ビルメンテナンスの平均年収は300万円程度ですが、大手のビルメンテナンス会社の平均年収は459万円となっており、日本全体の平均年収を上回っています。
大手のビルメンテナンス会社で年収1000万円を目指すのはむずかしそうですが、年収500万円くらいなら現実的に目指せる年収ラインです。
まとめ
今回のまとめです。
- ビルメンテナンスは未経験からでもチャレンジできる
- 資格取得によって年収を上げることが可能
- ビルメンテナンスの平均年収は300万円程度
- 大手ビルメンテナンスの平均年収は460万円程度
- 勤務形態や会社組織によって年収も変わる
- とくに大変なのは病院と大型施設のビルメンテナンス
- やりがいは使命感・専門知識が身につく・チームで仕事を進める
- 全国ビルメンテナス協会が日本全国のネットワークの中心
今回はビルメンテナンスの仕事内容や資格、年収や協会などの情報をまとめて解説しました。
ビルメンテナンスの仕事内容は「規模の大きな建物における施設の管理・メンテナンスを行うこと」です。
ビルメンテナンスの仕事にも、大変そうな部分や楽しそうな部分があるので、それぞれをしっかりと理解したうえで、仕事選びの参考にしてくださいね。
